映画『一命』では、江戸時代の武士 千々岩求女(瑛太)が切腹を申し出ますが、悲しき詐欺武士とも言えるので、その理由について詳しく紹介しましょう。
『一命』のキャスト
映画『一命』は、2011年10月15日に日本で上映されました(上映時間は約126分)。
監督&脚本
武士の弱き所と強き所を描いた映画『一命』を制作したのが、三池崇史監督になります。
登場人物&役者
映画『一命』に登場する人物や役者さんたちは、以下の通りです。
- 津雲半四郎/井伊家に切腹を願い出る武士(演:市川海老蔵)
- 千々岩求女/津雲より先に切腹した武士(演:瑛太)
- 美穂/千々岩の妻(演:満島ひかり)
- 斎藤勧解由/井伊家の家老(演:役所広司)
- 田尻/斎藤の家臣(演:竹中直人)
- 沢潟彦九郎/千々岩の介錯人(演:青木崇高)
- 松崎隼人正/金で解決しようとする武士(演:新井浩文)
- 川辺右馬助/千々岩を見下す武士(演:波岡一喜)
- 井伊掃部頭直孝/井伊家の当主(演:平岳大)
- 千々岩甚内/千々岩求女の父上(演:中村梅雀)
『一命』のストーリー
井伊家のもとへ、千々岩求女という武士が「浪人として落ちぶれた事を潔しとせず、武名の名高い井伊家の立派なお屋敷で切腹をしたい」と願いでてきました。
井伊家の沢潟彦九郎は、家老の斎藤勧解由に「今流行りの狂言切腹に相違ございませぬ」と知らせて「狂言切腹?」と聞いた事もない話に聞き返してしまうのです。
実は、狂言切腹とは、武士らしく切腹したいと願い出て、その潔さを認めてもらって仕官を叶えたり、他家から哀れんでもらって金子(金)を恵んでもらえる詐欺のようなものでした。
そこで井伊家は、千々岩求女に殿へ引き合わせようと油断させておいて、密かに脇差を調べてみたのです。そうしたら、その脇差は竹光であり切腹できるような代物ではなかったのです。
井伊家の者たちは、屋敷の庭先を切腹の場として設けますが、千々岩求女は「どうか3両たまわりたい、病弱な妻子を助けたいのです」と願い出ますが、沢潟彦九郎は「最後の願いがそれか、情けない奴め」と罵り、竹光で強引に切腹させてしまいました。
切れ味の悪い木刀では、腹に突き刺す事が難しくて何回も刺しますが、それでも沢潟彦九郎は「まだまだぁ!」と、さらに突き刺すように求めます。さすがの家老も見ておられず、自ら介錯をしました。
ところが、その後に津雲半四郎という武士も井伊家で切腹をしたいと申し出て「介錯人として沢潟彦九郎にお願いしたい、それが無理なら松崎殿か川辺殿をお願いしたい」と申し出ます。
所が3人とも行方が分からなくなったので、家老は「貴公、何しに参られた!」と殺気立ちますが、津雲半四郎は何者なのでしょうか?
『千々岩求女(瑛太)は哀しき江戸の詐欺武士』
千々岩求女(瑛太)は、病弱な妻を救いたかったのですが、お金が無かったので、切腹したいと願い出て、同情を買いお金を貰おうとしていました。
しかし、狂言切腹は流行っていたので、井伊家の家臣に見破られてしまい、千々岩求女は自前の脇差で強引に切腹させられてしまいました。
この脇差は竹光であり、事前に調べられていて「竹光などを脇差にするとは、やはり切腹する気など、毛頭なかったな」とバレてしまい、この竹光で何度も腹を刺させてしまうのです。
それでも、ラストシーンでは、津雲半四郎が千々岩求女の仇を討とうとして、井伊屋敷で大暴れするので、そこは気分がスカッとしましたね。
『一命』の豆知識
狂言切腹を取り上げた映画『一命』に関連する豆知識を紹介するので、良かったら、ご覧になってみて下さい。
江戸幕府の大名取り潰し
一命で、福島家が広島の領国を没収されますが、これは福島家に限った話ではありません。江戸幕府は力のありそうな大名に、次々に難癖をつけては改易(領国の没収など)や減封(領国を減らす)などを行なっていきました。
このような事を行うのは、室町幕府の教訓があったからでしょう。実際に、室町幕府は世継ぎ争いに、山名と細川の両大名が介入してしまって、未曾有の大内戦『応仁の乱』が勃発しました。
徳川家康は大の読書家として知られているので、室町幕府と同じ轍(てつ)は踏まないと決めたのでしょう。その考えが、徳川秀忠にも伝えられていた可能性が高いので、福島家が改易されたのも仕方のない話でした。
誤解される武士
今の日本では、何かあると『侍』という言葉を使います。しかし、侍である武士とは、全ての者が潔かった訳ではありません。
江戸幕府を開府した徳川家康でさえ、妻子を殺せと言われて仕方なく従った事もあります。 その他にも、藤堂高虎は7人も主君を変えています。
このように、武士とは潔くない所もありますが、それは武士にとって最も大事な事は家名を存続させる事。
そのため、この映画を見て武士らしくないと思う方はいるかもしれませんが、それは武士が戦さ場で華々しく散ってしまう所だけを映画やTVドラマで見ているからでしょう。
『一命』の感想
映画『一命』を見た感想を紹介するので、参考にしてみて下さい。
『一命』のオススメ層
武士であっても、血が通った人間である事に代わりはなくて、病弱な妻を何とか助けようとするシーンは、心が打たれるものがあります。そのため、歴史が好きな方でなくても、見所の多い映画ですね。
さらに、井伊屋敷が舞台となるので、あの有名な井伊の赤備えの話も出てくるので、歴史好きの方をうならせる作品でもあります。
- 歴史好き:⭐️⭐️⭐️⭐️
- カップル層:⭐️⭐️⭐️⭐️
- ファミリー層:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
- 若年層:⭐️⭐️⭐️
- 中年層:⭐️⭐️⭐️⭐️
- シニア層:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
『一命』の残念な所
この映画は、津雲半四郎が何者であるか?それが大きな見所と言えるのですが、いかんせん予告動画を見たら、だいたいは想像がついてしまいます。
そのため、予告動画でここまで内容をばらすのは不味いのではないかなと思ってしまったので、そこが残念な所でしたね。
そして千々岩甚内が、何回も木刀で腹を刺す所は衝撃的なシーンでもあるので、刺激の強いシーンを見たくない方は注意したほうが良いです。
『一命』の見所
武士の潔さばかりがもてはやされる時代にあって、この映画では見事に武士の弱さと強さの両方が描かれていました。千々岩求女は父や妻子を愛する者で、心優しい所がありますが、その優しさが弱さにもなって狂言切腹をするに至ります。
それに引き換え、津雲半四郎は武士として強い信念を持って、多くの武士を圧倒します。このように、千々岩求女と津雲半四郎が対照的な行動を取る事によって、一命は私たちに様々な事を考えさせてくれます。